BOOKレビュー:安藤忠雄『住宅』

安藤忠雄展に行ったことをきっかけに著書が気になっていくつか購入しました。氏は公共事業や大規模案件をいくつも抱える世界的な建築家ですが、売れっ子建築家になってからも積極的に個人の住宅も設計しています。家づくりを通して建築に興味を持った私なので、表参道ヒルズや渋谷駅などはっとするような安藤的巨大空間も好きですが、やはり最も身近に感じるのは住宅について。この本はタイトル通り建築家安藤忠雄が手掛けた住宅がどのような思い/背景で作られたのかが本人によって語られています。

建築家は頭の中に描いた絵を図面に起こすことが仕事で、そこまでは画家やイラストレーターと同じですが、アーティストとの最も大きな違いはその表現を現実的な数値に置き換えることを要求される点。だから、と断定するのは強引かもしれませんが、優秀な建築家は文章構成がとても上手ですね。安藤忠雄しかり、中村好文しかり。とくにこのお二人は伊丹十三のファンなので、文章にもその影響が強く表れていて、軽快で洒脱な文章が読みやすく面白いです。

「安藤忠雄ってコンクリート打ちっぱなしで冬寒くて夏暑い家を平気でつくる、ただのキワモノ建築家でしょ?」と思っている方にオススメしたい本。
私は安藤忠雄建築は綺麗だなと思ってもそこまで好き!LOVE!!というわけではないのですが、著書からは確固たる信念や理論的な設計手法だけなく、強烈な個性の中にちらつくキュートな一面が伺えて面白いです。

同じ住宅作品を集めた著作としてはこちらの本の方が収録数が多いですが、読み物としては『住宅』の方が良かったです。

氏の半生記としては『安藤忠雄 仕事をつくる―私の履歴書』もオススメ。日経に寄稿されたコラムを収めた単行本なので、1章が短く、専門的な用語の知識がなくても楽しめます。

安藤忠雄 住宅

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安藤忠雄 仕事をつくる―私の履歴書

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