シンプルでいて力強く、流行に左右されない普遍的な美しさを持つ建物を設計する建築家、堀部安嗣さんの新刊が1月に発売されました。発売当初に手に入れてから、何度となくじっくりと読んでいます。堀部さんの建てる建物は、住宅建築における一つの完成した体系である、とすら思っていますが、今回のこの本は、堀部さんが建物を設計するプロセスを感情面からひも解くという、ちょっと変わったアプローチがされていて、建築の本というより、自伝書的な風合いが強い本です。
若いころに作った建物への情熱的な(若さゆえの前のめり感が強い)気持ちから、年齢を重ねるにつれてほどよく老成された設計になっていく過程が興味深いです。
堀部さんの建てる建物にはどこかしら寺院っぽい雰囲気が漂うなと思っていたら、幼いころ大きなお寺のそばに住んでいらしたとのこと。やはり建物と設計者というのは切っても切り離せないもの。設計者を人間として好きになることと建物を気に入ることは≒の関係なんだろうなと思います。
堀部さんの設計図案集と合わせて読むとより面白さが増します。図案集、もう少し安価だと嬉しいんですけどね…。
機能性と美しさを具有する、シンプルでいて人間味のあるあたたかな設計がお好きな方にはぜひオススメしたい本です。
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